コラム
「インフルエンザにかかって熱は下がったのに、咳だけがずっと続いている」
「一度よくなったのに、また咳がひどくなってきた」
「夜になると咳が出て、眠れない」
「肺炎になっていないか心配」
インフルエンザの流行期には、このようなご相談を受けることがあります。
インフルエンザでは、発熱や全身のだるさ、筋肉痛などが改善した後も、咳が長く残ることがあります。一方で、インフルエンザに伴う肺炎や、回復に向かう途中で起こる細菌性肺炎、感染をきっかけに症状が現れる咳喘息など、適切な診断や治療が必要な病気もあります。
今回は、インフルエンザの後に咳が長引く原因、肺炎を疑うサイン、受診の目安について考えてみます。
1.なぜインフルエンザの熱が下がっても咳が続くの?
インフルエンザの症状が改善した後も咳が続く原因の一つは、気道の炎症や、咳を引き起こす反射の過敏さが残ることです。
気道とは、鼻や喉から気管、気管支へと続く空気の通り道です。インフルエンザウイルスに感染すると、気道の粘膜を傷つけ炎症が起こります。
その後、発熱などが落ち着いても、気道の状態がすぐに元通りになるとは限りません。咳を引き起こす神経が刺激に敏感になり、わずかな刺激でも咳が出やすくなることがあります。
例えば、次のようなときに咳が出ることはありませんか?
- 冷たい空気を吸い込んだとき
- 会話や電話で長く話したとき
- エアコンの風やたばこの煙に触れたとき
- 夜間や朝方に咳が出やすいとき
このように、呼吸器感染症にかかった後も咳が続く状態を「感染後咳嗽(かんせんごがいそう)」と呼びます。
感染後咳嗽は、時間とともに改善することが多いものの、数週間続くこともあります。
ただし、咳が続いているからといって、すべてが感染後咳嗽とは限りません。咳喘息や肺炎など、別の病気が隠れていないかを見極めることも大切です。
2.インフルエンザ後の咳はいつまで続く?
インフルエンザでは、発熱などの症状が数日で改善しても、咳やだるさが2週間以上続くことがあります。
感染後咳嗽では、時間の経過とともに咳が少しずつ軽くなっていくことが多い一方、数週間続く場合もあります。
咳が続く期間は、成人では一般的に次のように分類されます。
- 急性咳嗽(きゅうせいがいそう):3週間未満
- 遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう):3週間以上、8週間未満
- 慢性咳嗽(まんせいがいそう):8週間以上
この分類は、咳の原因を考えるための目安です。咳が続く期間だけで、原因を特定することはできません。
咳が徐々に軽くなり、熱や息苦しさがなく、全身の状態も改善している場合は、感染後咳嗽の可能性があります。
一方で、咳が悪化している、熱が再び出てきた、息苦しさがある場合には、肺炎などの合併症を考える必要があります。咳が続く期間だけで判断せず、症状の変化に注意しましょう。
インフルエンザの後に肺炎が起こることもあります
インフルエンザでは、ウイルス自体が肺に炎症を起こす「ウイルス性肺炎」が生じることがあります。また、インフルエンザの経過中や回復期に、細菌による肺炎を合併することもあります。これを「二次性細菌性肺炎」といいます。
インフルエンザの後に起こる細菌性肺炎の原因菌には、肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などがあります。インフルエンザ菌という細菌が原因になることもありますが、インフルエンザ菌はインフルエンザウイルスとは別のものです。
特に注意したいのは、いったん熱や咳が改善した後に、再び悪化する場合です。こうした変化があれば、肺炎などの合併症が起きていないか、医療機関で確認することが大切です。
3.インフルエンザ後に咳が続くとき、注意したい3つの原因
① 感染後咳嗽:感染後に気道が敏感になっている
感染後咳嗽では、発熱などの症状が改善した後も、乾いた咳が続くことがあります。
冷たい空気や会話などで咳が誘発されることも特徴の一つです。時間とともに改善することが多いですが、咳が強くて眠れない、日常生活に支障がある場合には、医療機関で相談しましょう。
② 咳喘息:ゼーゼーしなくても、喘息に関連する咳の可能性
咳喘息は、ゼーゼー、ヒューヒューという音(喘鳴)や明らかな息苦しさが目立たず、咳が主な症状となる病気です。
夜間や早朝に咳が出やすい、冷たい空気や会話で咳き込むといった症状がみられることがあります。
呼吸器感染症をきっかけに、喘息に関連する気道の炎症や過敏性が目立つようになることもあります。
咳喘息が疑われる場合には、症状や診察所見を踏まえ、必要に応じて当院では呼気NO検査などを行います。咳止めだけでは改善しにくい場合もあるため、長引く咳は原因に応じた診断と治療が重要です。
③ 肺炎:いったん改善した後の発熱や咳の悪化に注意
インフルエンザに伴う肺炎では、インフルエンザが治ったあとに、咳や痰が増えるほか、発熱や息苦しさ、胸の痛みなどが現れることがあります。
特に、次のような変化がある場合は、肺炎などの合併症を考え、早めに医療機関を受診してください。
- 熱がいったん下がった後、再び発熱した
- 咳が改善せず、むしろ強くなっている
- 息切れや息苦しさがある
- 胸の痛みがある
- 痰が増え、全身の状態も悪くなっている
なお、痰が黄色や緑色であることだけで、細菌感染や抗菌薬の必要性を判断することはできず、症状の経過や診察所見などを総合的に判断し治療内容を考えていきます。
4.なかしま大高クリニックでの診察・検査
当院では、呼吸器診察として、長引く咳の原因を症状の経過や診察所見から評価します。
咳が続く場合には、感染後咳嗽だけでなく、咳喘息や肺炎、COPDなどの他の可能性も考えます。
症状に応じて、次のような検査を検討します。
- 胸部レントゲン検査: 肺炎などの肺の病気が疑われる場合に行います。
- 呼気NO検査: 吐いた息に含まれる一酸化窒素を測定し、喘息に関連する気道の炎症を評価するために用います。
- 採血検査: 炎症反応などを確認し、診断の参考にします。
- スパイロ検査:病状が安定していたときにご自身の肺の力を確認します。
また、すべての方に同じ検査を行うわけではありません。問診や診察の結果を踏まえ、必要な検査を選択します。
治療も、感染後咳嗽、咳喘息、肺炎など、原因によって異なります。咳止めを続けるだけでなく、原因を見極めることが大切です。
6.インフルエンザ後の咳が心配な方へ
インフルエンザの熱が下がった後も、咳がしばらく続くことはあります。しかし、長引く咳をすべて「風邪の名残」と考えてよいわけではありません。
咳が徐々に軽くなっているか、再び熱が出ていないか、息苦しさがないかなど、症状の経過を確認することが大切です。
「なかしま大高クリニック」では、咳や痰、息苦しさなどの呼吸器症状について診察しています。
「インフルエンザの後から咳が止まらない」「肺炎になっていないか心配」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1.インフルエンザの熱が下がったのに、咳だけ続くのはなぜですか?
A.感染後に気道の炎症や、咳を引き起こす反射の過敏さが残るため、咳が続くことがあります。ただし、咳喘息や肺炎などが原因の場合もあるため、症状が悪化する場合や長引く場合は受診をご検討ください。
Q2.インフルエンザ後の咳は何日くらいで治りますか?
A.咳が数日で改善する方もいれば、2週間以上、場合によっては数週間続く方もいます。期間には個人差があります。咳が悪化する、再び発熱する、息苦しさがある場合は、早めに医療機関を受診してください。
Q3.インフルエンザの後に肺炎になることはありますか?
A.あります。インフルエンザウイルス自体による肺炎や、インフルエンザが傷つけた気管の粘膜から菌が入り込み細菌性肺炎を合併することがあります。いったん改善した熱や咳が再び悪化する、息苦しさや胸痛がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
Q4.咳が続く場合、レントゲン検査は必要ですか?
A.すべての方に必要なわけではありません。肺炎などが疑われる症状や診察所見がある場合に、胸部レントゲン検査などを検討します。症状に応じて検査の有無を判断します。