コラム
「健康診断で肺に影がある」と言われたことはありませんか?
咳や痰が長く続く原因はさまざまですが、年齢層が中高年の方で一つ注意したい病気に、【非結核性抗酸菌症(ひけっかくせいこうさんきんしょう)】があります。
その中でも、MAC(マック・Mycobacterium avium complex)という菌の属種によるものが多く、一般に「肺マック症」と呼ばれています。
そもそも「非結核性抗酸菌症」とは?
「抗酸菌」「結核」という字をみると、「結核ではないの?」と心配される方もいらっしゃいます。
非結核性抗酸菌症は、結核菌とは異なる非結核性の抗酸菌が肺に感染して起こる病気です。
原因となる菌は、土や水など私たちの身近な環境に存在しています。
特に、よくみられる方の特徴には
- 中高年の女性
- やせ型の方
- 気管支拡張症など、もともと肺や気管支に病気がある方などでやや多くみられることがあります。
どんな症状が出るのでしょうか?
初期には、ほとんど症状がないこともあります。
肺MACの代表的な症状は、
- 咳が長く続く
- 痰が続く
- 痰が増えてきた
- 血の混じった痰が出る
- 息切れ
- 微熱
- 体重が減ってきた などです。
もちろん、長引く咳がすべて肺マック症というわけではありませんし、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、肺炎、肺がん、心不全など、ほかにもさまざまな病気があります。それ故、「長引く咳」症状をほかっていくと「風邪が治っていないだけ」と自己判断せず、一度原因を調べることが大切です。
「人にうつるの?」と心配される方へ
非結核性抗酸菌症は、結核とは異なり、通常は人から人へうつる病気とは考えられていません。 そのため、肺マック症と診断されたからといって、家族や職場の人への感染を過剰に心配する必要はありません。 非結核性抗酸菌は、土や水など環境中に存在しており、日常生活の中で菌を吸い込むことなどが発症に関係すると考えられています。
どうやって診断するのでしょうか?
まず、胸部レントゲン検査で肺の状態確認、採血で抗体検査を補助的に確認します。必要に応じて専門医療機関と協力し胸部CT検査を行うとレントゲンでは分かりにくい小さな影、粒状影や気管支の拡張などの状態を詳しく調べることができ、痰の検査もおこない痰の中に非結核性抗酸菌がいるかどうかを調べます。一度の痰の検査だけでは判断できないこともあるため、症状や画像検査の結果と、複数回の痰の検査などを組み合わせて、総合的に診断します。痰が出ない場合や、通と常の検査だけでは診断が難しい場合には、気管支鏡検査を行うこともあります。
肺マック症と診断されたら、すぐ薬を飲まなければいけないんでしょうか?
肺マック症と診断されたからといって、全員がすぐに薬が必要なわけではありません。
症状がほとんどなく、画像上の変化も比較的軽い場合には、定期的にレントゲンやCT、痰の検査などを行いながら、しばらく経過を見ることがあります。
一方で、
- 咳や痰などの症状が強い
- 画像上の病変が進行している
- 空洞がみられる
- 痰から菌が繰り返し検出される
などの場合には、薬による治療を検討します。つまり、「非結核性抗酸菌症(肺MAC)=すぐ治療」ではなく、その人の症状や肺の状態、病気の進み方などを見ながら治療方針を決めることが大切です。
治療には時間がかかります
肺マック症の治療では、複数の抗菌薬を組み合わせ治療をおこないます。
代表的な薬には、
- リファンピシン
- エタンブトール
- クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン などです。。
治療は短期間で終わるものではなく、痰の培養結果などを確認しながら、長期間にわたって続けます。。
また、治療薬によっては肝機能障害や視力への影響などの副作用が起こることがあるため、治療中は定期的な血液検査や視力、全身状態の確認などを行い経過をみることが必要です。。だからこそ、治療を始めるかどうか、どの薬を使うかについては、病気の進行度と治療によるメリット・デメリットを考えながら決めていく必要があります。
こんな方は一度、呼吸器の診察をおすすめします
☑ 咳や痰が何週間も続いている
☑ 風邪が治ったのに咳だけが残っている
☑ 血の混じった痰が出ることがある
☑ 健診で「肺に影がある」と言われた
☑ 胸部レントゲンで毎年同じ場所を指摘される
☑ 気管支拡張症など、肺の病気を指摘されたことがある
長引く咳や痰には、肺マック症以外にもさまざまな原因があります。大切なのは、「風邪だろう」「年齢のせいだろう」と長期間そのままにしないことです。
咳や痰が長く続いている方、健診で胸部レントゲンの異常を指摘された方は、お気軽にご相談ください。
「たかが咳」と思っていた症状が、なにかしらの肺からのサインかもしれません。
非結核性抗酸菌症(肺マック症) よくある質問
Q1.肺マック症は、人にうつりますか?
A.通常、肺マック症が人から人へうつることはありません。
肺マック症の原因となる非結核性抗酸菌は、土や水など私たちの身近な環境に存在しています。結核とは異なり、通常は家族や職場の人への感染を心配する必要はありません。
Q2.肺マック症は、どのような症状がありますか?
A.咳や痰が長く続くことが代表的な症状です。
初期には症状がほとんどないこともあり、健康診断の胸部レントゲン検査で肺の影を指摘され、詳しい検査を受けて発見されることもあります。病状によっては、血痰、微熱、息切れ、体重減少などがみられることがあります。
Q3.肺マック症と診断されたら、すぐに薬を飲む必要がありますか?
A.すべての方がすぐに薬物治療を始めるわけではありません。
症状や胸部CTの所見、痰の検査結果、病気の進行状況などを総合的に判断します。症状が軽く病変の進行もない場合には、定期的なレントゲン・CT検査や痰の検査を行いながら経過を見ることもあります。一方、病気の進行がみられる場合や症状が強い場合には、複数の抗菌薬による治療を検討します。
Q4.長引く咳がある場合、肺マック症の検査を受けたほうがよいですか?
A.咳や痰が長期間続いている場合や、健診で肺の影を指摘された場合は、一度呼吸器内科で相談することをおすすめします。
長引く咳の原因は、肺マック症だけではありません。喘息、COPD、気管支拡張症、肺炎、肺がんなど、さまざまな病気が考えられます。胸部レントゲンや必要に応じたCT検査、痰の検査などを組み合わせて原因を調べます。